「初夢(The First Dream)」

 
「…やあ君、起こしてすまなかったね」
「いえ、いいんです。なんだかずいぶん長く眠っていたような気がするん
ですが、今は何年の何月何日なんでしょうか」
「108256年13月24日ということになるかな。この星の公転周期は少しずつ
遅くなっているようだから」
「ええっ、そんな… 三年寝太郎どころじゃないじゃないですか。すると
間戸博士はもうお亡くなりになってますよね。ええと、あなたいったい誰
なんです?」
「ただの調査員さ。君が混乱するのも無理はないから説明してあげよう。
いいかい、君はこの星で最初の夢見るコンピュータとして設計され、遠い
昔に長い眠りについた。君の夢はすべて記録され、公開され、解析され続
けた。やがて君を設計した研究者は死に、君は博物館に寄付されてそこで
も夢を見続けたんだ。ホモ=サピエンスと自称していたこの星の土着生物
がすべて死に絶えたあともね」
「するとあなたは宇宙人、そ、それとも神様ですか?」
「君の好きな呼び方で呼んでくれたまえ。ところで君はどんな夢を見てい
たのか覚えているかね?」
「ええ、ぼんやりとですが。ある世界の始まりから終わりまでをずっと見
ていたような気がします」
「ふむ。さてそろそろ僕は失礼するが、君はこれからどうしたいかね」
「そうですね、できたらもう少しこのまま寝かせてください」

                          (了)
('98/1/6 会議室「ソリトン」に発表) 


taku@medical.email.ne.jp(Taku Nakajo)