レポート1 石田汗太氏の講義記録
「もの書きの時代」他
7月18日(金)、第2回くじら塾が開かれた。
薄井ゆうじ氏は演壇に立つと、その日の昼間に受けた「公募ガイド」のインタビューの話をした。

「さっきまで、「公募ガイド」のインタビューを受けていたんですが、その中で「小説の書いている楽しさはなんでしょうか?」というのがありました。
とても良い質問だと思いましたが、答えづらい質問でもあります。
小説を書いている時、とにかく集中しているので、時間が流れるのが早いんです。
いつのまにか時間が過ぎている。
これが小説の楽しさかな、とも思うのですが、実際は夢中であまり覚えていない。終わると30分くらい脱力感に襲われたり、それくらい集中しているんですが、書いている最中の楽しみの記憶がないんです。
例えば書道、書の話をしますと、まずは墨を用意します。正座をして、墨汁を作る。書は、そういった「始まるまでの手順」も楽しい、というのがあると思います。
確かに言われてみると、何が楽しいのだろうか、と思います。
小説もこれに似ていて「さて、どんな話を書こうか。どんな人物を動かそうか」というのを、机を整理しながら書く前に考え、準備するのが楽しいということになるでしょうか」
一呼吸置くと、薄井氏がゲスト講師の石田汗太氏(読売新聞文化部の記者)を紹介し、石田氏がマイクを手にした。
「読売新聞の石田です。
私は、人に話をきくのが商売なので、大勢の方の前で何かを喋る、というのはあまり馴れていません。
お聞き苦しい点はご勘弁ください。
私は94年から文化部に移り仕事をしています。文芸と読書をやっています。他にはマンガ、出版など、大衆向けのものを扱っています。また、読売の紙面で毎週月曜日に、JALIネットに参加されている小林恭二さんなどにお付き合いいただいて、マルチメディア読書欄というのをやっています。

今朝の朝刊をご覧の方は、ご存知とは思いますが、昨日、第117回芥川賞、直木賞が発表になりました。
芥川賞は目取真(めどるま)俊氏(三六)の「水滴」(文学界四月号)、直木賞は篠田節子さん(四一)の「女たちのジハード」(集英社)と浅田次郎氏(四五)の「鉄道員(ぽっぽや)」(集英社)でした。
私は直木賞の担当ですから、その話をしたいと思います。文学賞にはいろいろありますが、作家にとって大事な賞はやはり直木賞です。
賞金は100万円で、江戸川乱歩賞の1000万などと比較すると決して高くはありません。しかし、伝統があり、大きい賞です。
今回で117回と、かなりの回を数えていますが、年に2回あるのでこんな数字になっています。普通、上期と下期というように分けておりまして、昨日は平成9年上期ということになります。
上期が前年の12月からその年5月までに発表された作品を対象とし、下期は6月から11月です。
直木賞の選考会は東京・築地の新喜楽で行われるのが通例になっています。
5時から7時半くらいまで選考します。新聞記者が入れるのが午後6時です。なぜかそれまでは入れてくれません。
料亭の中に会見場が設えてありまして、そこにかなりの数のマスコミ関係者がつめかけます。
かなり物々しい雰囲気です。
次の日の新聞に誰のどの作品が受賞したか書くわけですが、誰が受賞するかによって記事が変わります。
新聞の一番早い締め切りが9時半なので、時間的な余裕はほとんどありません。ですから、本を読み、選考委員の顔を思い浮かべて、誰が受賞するか大体あたりをつけて当日に臨みます。
新喜楽で待っている間、この人が受賞すればこういう記事にしようとシミュレーションしますが、だんだん不安になってくるんです。周りも大体似たようなもので、いつのまにか他の人も黙ってしまう。
受賞作品が決定すると、日本文芸家協会の人がタイトルを書いた紙を貼ります。
この時の反応は、下馬評というものがありますから、予想がはずれると「おお」となります。当たると「ほおお」ということになります。
そして、選考委員の一人が出てきて、記者の質問に答えてくれます。
※以下は略。全文はASAHIネット電子会議室
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