あとがき
「大きな秘密ほど巧妙に隠される」
という言葉があります。
この言葉が真実だとすれば、何もかも露になりたがるこの時代にも、否、むしろ何もかもが安 易に露になりたがるこの時代であればこそ、より大きな秘密は保たれ続けている、ということに なります。
ああ、なんと心安らぐことでしょう。
この時代に未だ秘密であることを保っている大きな真実がある、と考えることは。
わたしはこの小説を書いている間中、ずっとこの言葉のことを考えていました。
と言ってわたしは、この小説の中に「大きな秘密」が隠されているのだ、と言う気はぜんぜん ありません。
わたしの願いは、むしろこの小説が「大きな秘密」の隠れ場所になることでした。
この本が、読者のみなさんがもっている大きな秘密の隠れ場所になれば、わたしにとってこれ 以上の喜びはないのです。(小さな秘密は‥‥まあ、御遠慮ください。)
これはわたしの本音です。
本当の本音です。
さて、この小説を書くにあっては海燕編集部の寺田さん、佐藤さんに、ひとかたならぬお世話 になりました。本の中には編集者の協力が無ければできない本と、無いなら無いでできる本があ ると思いますが、この本はあきらかに前者でした。本当にありがとう。一九八七年五月十日深更
小 林 恭 二
(C)1987/5 Kyoji Kobayashi
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