カメ天国通信


その104

【カメ人間日記】
(2005年1月後半)

一月十六日(日)
 じつは子供が生まれそうなのである。というか、今日が予定日だ。ところが助産院での検診ではまだまだらしい。
 赤ん坊が子宮口のところまでまだ下がってきていないという。そのためには歩くのがいちばんらしい。このところやたら散歩ばかりしているのははそういう事情なのであった。
 今日から足ののツボにお灸をするように、とアドバイスされたので、帰りに千年灸を買う。せっかくだから私も肩やら腰にすえてみる。効いているのかなんだかわからないが、なかなかおもしろい。
*玄米、味噌汁、サラダ、コロッケ、山芋短冊、シュークリーム、栗きんとんケーキ、バームクーヘン。

一月十七日(月)
 平野まで歩く。川沿いになかなかいい散歩道を発見。水路が枝分かれしている風景に弱いことを再確認する。とくに、そこに水門とかがあったりすると、もうダメである。思わず手すりから身を乗り出して見とれてしまうのだ。
*ラーメン、リンゴ、バームクーヘン、バナナケーキ、栗きんとん。

一月十八日(火)
 予定日を過ぎたので、病院で胎児の様子をモニターする。まだ子宮口は開いていないが、下がってはきているらしい。胎児にも胎盤にも問題なし。そのまま、天王寺駅のあたりをうろつく。
 夜、ひさしぶりに五十分ほど走る。
*玄米、トムヤムスープ、ほうれん草とベーコンのニンニク炒め、小松菜とうす揚げの煮浸し、大根と水菜のサラダ、コロッケ。

一月十九日(水)
*白米、トムヤムスープ、キッシュ、パプリカとモツアレラチーズのサラダ、大根と水菜のサラダ、大根の煮つけ、海老胡桃、山芋短冊、栗きんとんの生クリーム添え。

一月二十日(木)
 陣痛らしきものがあったので、勢い込んで助産院へ行くが、結局それは単なる前駆陣痛らしい。助産婦さんに「まだもうちょっとかかるなあ」と言われ、すごすごと帰宅。だいぶ進んでいることは進んでいるが、まだ出てくる感じではないらしい。予定日は十六日だったのだが、おおかた両親に似てのんびりしているのだろうな。

一月二十一日(金)
 昼間に陣痛らしきものがあって、助産婦さんに見てもらうが、まだもうちょっと、ところがそれがいつまでも収まらず、だんだん周期も短くなってくる。
*大根と水菜のサラダ、白米、トムヤムスープ、魚と大根の煮つけ。

一月二十二日(土)
 夜中の二時に、量はわずかだが破水らしき兆候が見られたので助産婦さんに電話。どうやら急激に進んだらしい。すぐに車をとばして来てくれる。ありがたいことだ。そのまま病院へ。最初は助産院で産むつもりだったのが、途中の検査で菌が検出さえ、それで念のため助産婦さんの付き添いで病院で産むということになったわけだが、結果的にはそれがよかったようだ。途中で臍の尾が巻いていることがわかって、赤ん坊の安全のために切開しなければならなくなり、陣痛促進剤と吸引を使い、お腹を押すようにしてようやく無事出産。
 朝の五時五十五分に誕生。女の子です。
 つまり私は父親になったわけだが、しかしまあなんというかこれは、じつに変なものだなあ。
 家に帰ってきて、洗濯して、それから子供用の蒲団を袋から出して部屋の隅に敷いてみた。まあ、あの人もあの人も、そしてあんな人でも、ちゃんと育てているのだから、と知り合いの顔を思い浮かべつつ、自転車で再び病院へと向かった私である。
 それからまだいろいろとあったが省略、なにしろ長い一日だった。
*牡蠣フライ定食。

一月二十三日(日)
 朝、検査で感染はなかったので、助産婦さんの車で妻と子供といっしょに帰ってくる。というわけで、これで我が家は三人と亀三匹になった。おむつを替えたりしつつ、日曜日のお楽しみである山下達郎のサンデーソングブックなどを聴く。
 今日からしばらくは私が飯を作ることになる。まあ妻のように凝ったものは作れないが、そこそこおいしいものくらいなら作れるだろう。
*穴子丼、トムヤムスープ、アボカド。

一月二十四日(月)
 三人で始めて一晩過ごしたわけだが、いや赤ん坊というものは、具合が悪いのか大丈夫なのか見ていてもさっぱりわからず、口から何かを吐いたり、体内でごぼごぼと変な音をたてたり、ぐったりしてるのか良く寝てるのかもわからない。これ、もしかしたらえらいことになってんのんちゃうん、というような状況もあったりして、いやなかなか大変だ。
 朝、助産婦さんが来てくれていろいろと指導を受ける。沐浴のさせかたとか。
 夕方、飯を作って妻といっしょに食べてから、ちょっとだけ大学の落語研究会の連中の飲み会に顔を出す。もちろん酔っ払わずに帰ってこなければならない。
*大根と水菜とマッシュルームとパプリカのサラダ、味噌汁、白米、韓国海苔、海老胡桃。

一月二十五日(火)
 乳が張るので、食べ物に気をつけなければならない。もちろん私の乳ではなく、妻の乳が張るのである。乳製品と肉がダメらしいから、とりあえず野菜だなあ。具沢山の味噌汁とお浸しと野菜炒めと、まあそのあたりで乗り切ることにしよう。果物はいいのか。えっ、バナナもアボカドもダメなんですか。それはかわいそうだなあ。
*豆もやしとマイタケとほうれん草の炒め物、しじみ味噌汁、冷奴、白米、りんご、いちご。

一月二十六日(水)
 初めて布オムツを試す。昼は布、夜中は紙ということになりそうだ。
 昼間はよく寝るのだが、夜は乳を欲しがってうんこをして乳を欲しがってうんこをする、の繰り返し。まるで珍獣である。
*卵と野菜の炒め物、具沢山味噌汁、白米、りんご、メロン。

一月二十七日(木)
 だいぶ生活のペースがつかめてくる。
 こんなことを書くとアホみたいだが、ときどき信じられないほどかわいい声を出す。まあかわいがられないと死んでしまうわけだから、そういう能力を備えているのだろうな。
『すごいよマサルさん』に出てくるメソという生き物は、きっとこんな感じなのだろうなと思う。
 今日はいい蒟蒻が手に入ったのでおでんを作る。
*おでん、水菜、焼き穴子、白米、メロン。

一月二十八日(金)
 出生届を出しに行く。この子は21世紀に生まれた子供なのだなあ。
 名前は「小春」にした。言うまでもなく、HAL9000からとったのである。
*シメジの味噌汁、大根とパプリカと水菜のサラダ、白米、キムチ、松茸昆布、りんご、みかん。

一月二十九日(土)
 初めて子供を風呂に入れた。首を持つとぷかぷか浮かぶ。腹が沈まないくらいよく浮く。風呂好きらしく、気持ちよさそうに浮いている。
 このところ、産まれて初めてのことが次々とあるので不思議である。
*味噌煮こみうどん、大根と水菜とマッシュルームのサラダ、りんご、いちご、みかん。

一月三十日(日)
 どたばたと大勢やってきてどたばたと帰っていった。子供はそんなものまったく関係なく、踏まれそうになったりしながらもずっと寝ているのだ。
*野菜炒めと焼き素麺、スパゲティと水菜のサラダ、いちご、りんご。

一月三十一日(月)
 寒波がやってくるというだけあって、昼間から雪がちらついていて、珍しく冬らしい空気で、こういうのは好きだ。
*おでん、スパゲティと水菜のサラダ、白米。


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