カメ天国通信


その134

【カメ人間日記】
(2006年5月)

五月一日(月)
 夜、一時間ほど走る。
*角煮、白米、煮卵、水菜と大根といたどりのサラダ、グレープフルーツ、林檎、ブリュレ。

五月二日(火)
*蕪と春キャベツと鰯のスパゲティ、水菜と大根といたどりのサラダ、グレープフルーツ、ロールケーキ。

五月三日(水)
 雀のおやどゴールデン落語会に行く。三日連続の今日が初日。立ち見まで出るのも納得のいい会だった。
 それにしても特筆すべきは、今日の雀三郎師匠の崇徳院のクライマックスでのあの演出である。ちょっと文章では説明しにくいし、しても伝わらないと思うので、特筆すべきとか言いながらここには書かないのだが、とにかく落語でああいうやり方が成立するとは思いもよらなかったので、かなりびっくりして、今もびっくりしたままこれを書いている。
 はたしてあれは、前からある型のなのだろうか。あんなのは今まで見たことも聞いたこともないのだが。今日は打ち上げに出なかったので聞けなかった。こんど聞こう。オリジナルだとすれば、すごいアイデアだし、もちろんアイデアだけでなく、相当なテクニックがないとあんなことはできない。まったく、すごいものを見た。
*盛岡冷麺、角煮、煮卵、水菜と大根といたどりのサラダ、キムチ、グレープフルーツ、林檎。

五月四日(木)
 韓国行きのため、妻の実家に亀三匹を移動。
 夜、一時間ほど走る。
*ちらし寿司、胡瓜と大根と水菜のサラダ、キムチ、グレープフルーツ、豆乳わらび餅。

五月五日(日)
 ゴールデン落語会の最終日。本来ならここで演者とネタをちゃんと全部書くところなのだろうが、あいにく私は落語おたくでも演芸担当記者でもないのでそんな面倒なことはしない。ほんまに今日もどのネタもそれぞれにおもしろかったのだが、やっぱり最後に桂雀三郎が出てきてしまうと全部がふっとんでしまうのである。
 今日は寝床。このネタの場合、ギャグをエスカレートさせて力づくでシュールなところまで持っていってしまうというのが従来のやり方だと思うのだが、雀三郎師匠のやり方は明らかにそれとは力点の置き方が違っていて、まず確実に受けるであろう卵屋さんのエピソードとか声が頭の上を飛んでいくというギャグをカットしていることからも、この非現実的な話をあえてリアリズムで攻めていこうという意図は明らかで、古典をこういう切り口で見せてくれる落語家というのは、私はこの人以外に思いつかない。実際、もう小学生の頃から落語を聴いていて今更落語を聴いて感動するなどということはまあないだろうと思っていたのだが、これがそんなこともないのだなあ。今がその状態です。あ、それから前に書いた崇徳院のあの演出は雀三郎師匠のオリジナルであるということを今日の打ち上げの席で直接尋ねて確認した。あれは我ながらうまいこと考えたもんやと思うとおっしゃってましたが、ほんまにその通り。大げさでもなんでなく、あれは落語というものがこれまで持っていなかった新しい表現をひとつ付け加えたのと思います。あのやり方はこれまでの落語の文脈にはなかったもので、まあそこらが桂雀三郎の異端たるところなのだが、異端でありながらその圧倒的なテクニックというか芸の力で、どんな正統派よりも正統になってしまった、ということなのだろう。いやもう、ほんまに落語好きでよかったと思う。
*打ち上げの席にあったもの。

五月六日(土)
*白米、角煮、玉葱と蒟蒻の煮物、胡瓜と大根と水菜のサラダ、山芋短冊、味噌汁、グレープフルーツ、最中。

五月七日(日)
 明日から十八日まで韓国である。
*筍ご飯、玉葱と蒟蒻の煮物、胡瓜と大根と水菜のサラダ、山芋短冊、味噌汁、グレープフルーツ。

五月十八日(木)
 韓国より無事帰還。それにしても、時差がないというのは楽だなあ。
*ちらし寿司。

五月十九日(金)
*トマトとチーズのオムレツ、白米、いかなご、味噌汁、柚子蒟蒻、最中。

五月二十日(土)
 『ハナシをノベル』という落語会があって、これは月亭八天さんが、小説家の書いた新作を毎回やる、というかなり無謀なものなのだが、今日がその第一回で、企画者である田中啓文さんの書いた落語を二席と対談。六時半開場なのに、会議室が六時からしか使えない。三十分で会場を作らねばならないということなので、とりあえず六時前に行って、ばたばたと机を片付けたり椅子を出したりしているうちにすぐに開場になり、まあなんとかぎりぎりで間に合った。どうなるかさっぱりわからないこういう企画にふさわしく、演者も客も、とても落語会とは思えないような緊張感だったが、これはもう仕方がない。落語会というより、公開実験室みたいなものなのだ。まだ高座にかけられたことのない新作というのは、おもしろいとは限らない、というか、むしろ、かなりおもしろい要素を持っているものでも、ここから何年あるいは何十年かかってやっと使い物になるネタに成長していくもので、その結果残っているのが今、古典落語と呼ばれている数々のネタなのだ。
 そのあたりのことをわかってくれて、未完成であたりまえ、という状態を許容してくれる観客がいなければ、これから作られる落語が新たな古典へと育っていくということもない。
 田中啓文さんの書いた『新説 七度狐』と『皿相撲』は、なにしろネタ下ろしだけあってまったくこなれていないし、改良の余地もたくさんあるのだが、なによりもちゃんと落語になっていた。これをきっかけに、私もちょっと気合をいれて落語を書いていこうかと思ってます。せっかくこんないい実験室を手に入れたわけだし。
 というわけで、第二回は私の書いたネタをやります。

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日時:七月二十二日(土)
十八時三十分開場(十九時開演)
場所:大阪市中央公会堂(中之島公会堂)
地下大会議室(地下鉄・京阪淀屋橋駅北へ徒歩5分)
出演:月亭八天、北野勇作(対談)
問合先:英知プロジェクト(06)6956−8810
料金は前売りなし当日のみの二千円です。
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 よろしくお願いします。

*打ち上げの場にあったもの。

五月二十一日(日)
*鰤の子の煮物、白米、味噌汁、キムチ、ほうれん草とトマトのサラダ、林檎。

五月二十二日(月)
 午前中、劇団の稽古場でトランペットのレッスン。午後、阪大のサイバーメディアセンターというじつにSFな建物で行われた四方哲也氏(阪大情報科学研究科・生命機能研究科)の講義を見物に行く。これは菊地誠さんのゼミの特別講義なのでが、電脳空間上ではなく試験管のなかで人工生命(あるいはその機能の一部を模倣したもの)を作ろうというじつにSFな内容なのだった。まるでマッドサイエンス入門である。期待通りのとても刺激的でネタ満載の講義。やっぱり本物を見るというのはいろいろと参考になる。というわけで、全然仕事をしていないのだが、なかなかに充実した一日だった。
*居酒屋にあったもの。

五月二十三日(火)
*ドリア、ほうれん草とトマトと玉葱のサラダ、トムヤムクン、林檎、カヌレ。

五月二十四日(水)
*鯵の塩焼き、渡り蟹の醤油漬け、玄米、ほうれん草とトマトと玉葱のサラダ、おから、トムヤムクン、林檎、カヌレ。

五月二十五日(木)
 夜、五十分ほど走る。
*パエリア、鯵の塩焼き、ほうれん草とトマトと玉葱のサラダ、味噌汁、グレープフルーツ、林檎、カヌレ。

五月二十六日(金)
 谷川流さんを囲む会という名目で飲みに行ったのだが、駄洒落で話の腰を折りまくる人はいるわ、ギロンなどの宇宙怪獣についての議論を一方的にふっかけてくる人いるわで、到底まともな話ができるような状況ではなく、結局まったくといっていいほど囲むとができず、恐れていたとおりいつものわけのわからない集まりになってしまったのだった。
*居酒屋にあったもの。

五月二十七日(土)
*ラムステーキ、カボチャと玉葱と蓮根の炒め物、白米、キムチ、味噌汁。

五月二十八日(日)
*チゲ。

五月二十九日(月)
 日本沈没の試写会に行く。映画は、もうとにかくびっくりした。ここ十年くらいの映画ではいちばんびっくりしたのではなかろうか。あんまりびっくりしたので会場にいた小林泰三さんと田中哲弥さんといっしょに飲みに行って、皆でびっくり具合を確認しあった。  環状線のホームで桂雀三郎師匠にばったりと出会い、今度、月亭八天さんに私の書いた新作をやってもらうことなどを電車のなかで話しつつ寺田町まで帰ってくる。
*居酒屋にあったもの。

五月三十日(火)
*チゲ。

五月三十一日(水)
*チゲ雑炊。



無断転載禁止 (c) Yusaku Kitano/Hiroko Morikawa(イラスト)
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