カメ天国通信


その137

【カメ人間日記】
(2006年7月前半)

七月一日(土)
 夜、一時間ほど走る。
*カレーライス、大根とトマトと水菜のサラダ、ヨーグルト、ナタデココ。

七月二日(日)
 昨日あたりから、うちの娘は犬のことを「わあわ」と呼ぶようになった。近所にいる生きた犬も道端の植木鉢に入った瀬戸物の犬もイラストの犬も写真の犬もテレビのなかの着ぐるみの犬も、ちゃんと「わあわ」と呼ぶのである。あれとあれとはともかく、あれとあれとあれは見た目も材質も全然違うものなのに、それを同じものとしてとらえることができるというのは、いったいどういう仕組みなのか。脳みそのなかではいかなる処理が行われているのか。なぜそんなことが勝手にできるようになるのか。不可解としか言いようがない。実際にこうして自分の目で見なければ、そんなこと到底信じられないだろうなあ。 「いやいや、ご主人、ほんまに勝手にできるようになるんですよ。あとでなんかを取りつけたりとかせんでも、これだけ、これだけでええんです」
「わはは、そんなアホな。その手は食うかい。なんやかんや言うて、どうせあとでいろんな部品買わないかんねやろ」
「いや、そんなことありませんって」
「ほな、なにがどうなってそんなことできるんや」
「それは私もわかりませんけど。ああ、そんなとこ開けたらあかん開けたら。壊れてしまいますがな」
「ほら見てみい。いらんいらん、持って帰って」
 とか、そういうことになると思うのである。
*ドライカレー、トムヤムスープ、大根とトマトと水菜のサラダ、ヨーグルト、ナタデココ。

七月三日(月)
 午後、歯医者に行く。まったく痛くない。昔の歯の治療はこんなものではなかった。
 夜、一時間ほど走る。
*筍ご飯、トムヤムスープ、大根とトマトと胡瓜のサラダ、蛸の塩辛。

七月四日(火)
 とくに好きでもないがたまに食うとすごくうまく感じるもの、というのがあって、例えば今日の夕食がそうだった。
 夜は劇団の稽古。
*ソースヤキソバ。

七月五日(水)
 桂雀三郎 WITH まんぷくブラザーズのライブに行く。なによりも驚くのはライブバンドとしての完成度の高さである。まあ、こなした余興の数は、そこいらのバンドでは到底太刀打ちできないだろうからな。才能のある人間が本気で10年やれば、これだけのことができてしまうという見本。打ちこみもなんにもなしで、20曲ほどを余裕たっぷりに一気に聴かせ笑わせ、初めて聴く曲でも歌詞は100パーセント聴き取れるし、メンバー四人のバランスはとてもいい。サビでありオチでもあるメロディーと歌詞をきれいにハモりながらやられたら、そらもうアホらしいやらカッコいいいやらで、相当に気持ちがいいのである。こんなことのできるバンドが他にあるか。やぐら行進曲はやっぱり名曲だと思う。「桂枝雀の二番弟子」というフレーズはやっぱりいい。ちょっと泣きそうになってしまった。もちろん泣くところではないのだが。
 ついでに打ち上げにもお邪魔したら、イラストレーターの長谷川義史さんがいてさっそく紹介してもらった。ああ関西は狭い。狭い関西万歳。私はすっかり嬉しくて酔っ払って、長谷川さんに、亀と粗大ゴミとパンの耳についての話を延々して、さすがにあれはちょっとまずかったかなあとか思っているのだが、まあ今になってここでそんなことを書いてもどうしようもない。
*ソバ飯、大根と胡瓜とトマトのサラダ、トムヤムスープ、人参の葉と塩豚の炒め物。

七月六日(木)
 夜は劇団の稽古。
*豆ご飯、鮎の塩焼き、大根と胡瓜とトマトのサラダ、トムヤムスープ、人参の葉と塩豚の炒め物、烏賊の醤油漬け。

七月七日(金)
 ライブに行く。
 唐口一之(tp) 向原千草(as) 奥村美里(pf) 宮上啓仁(bs) 弦牧 潔(ds)
 自転車でひょいと行ってこんな演奏を聴けるというのは幸せとしかいいようがない。最近になってやっといろんな音が聞こえるようになってきた気がする。もっともまだ全然ついていけないのだが。音楽を楽しむのには学習が必要であるということを再認識。それにしても客が少ないのはもったいないなあ。こういうのはなんとかならんものか。
*筍ご飯、大根と胡瓜とトマトのサラダ、味噌汁、人参の葉と塩豚の炒め物、西瓜。

七月八日(土)
*卵ご飯、トムヤムスープ、厚揚げ、大根とトマトと玉葱のサラダ、スイートコーン、人参の葉と塩豚の炒め物、西瓜。

七月九日(日)
 劇団太陽族『だけど、ほらごらん』を観に行く。「悪気のない嫌な人」とか「鬱陶しい人」がとてもリアルに描かれていて、終わり方もどうにもやりきれない感じでよかった。
*豆ご飯、味噌汁、大根の葉と塩豚の炒め物、チョコレートケーキ。

七月十日(月)
 菊地誠さんの授業を聴講に行く。毎回、いろいろとネタをいただくのだが、今回は「UFOとポストモダン」(平凡社新書)の著者である木原善彦さん(阪大言語文化研究科)の講義。予習として読んだこの「UFOとポストモダン」というのがめっぽうおもしろくて、前からこういうことではないか、などと薄ぼんやりと考えていたことに、じつにすっきりとした答えが提示されていて、木原さんの講義も、それはちょっとわからないです、とか、このへんはちょっと強引です、とか、そのへんの線引きが明快で、とてもおもしろく参考になった。それにしても、ロズウェル事件というのは、ほんとうに魅力的な民話だなあ。
*白米、キムチ、蛸の塩辛。

七月十一日(火)
 しかしまあ、たとえキレても手よりも先に頭が出てしまうというのは、偉いようなアホなようなおもろいような悲しいような感じでサッカーにまったく興味のない私にとってもいろいろと興味ぶかい出来事でした。
 夜、久しぶりに一時間ほど走る。
*穴子丼、茄子とピーマンの炒め物、胡瓜とトマトと大根のサラダ、コールスロー、味噌汁、マロンケーキ。

七月十二日(水)
*筍ご飯、じゅんさい、胡瓜とトマトと玉葱のサラダ、コールスロー、スイートコーン、味噌汁。

七月十三日(木)
 娘はもうだいぶ歩けるようになってきた。前のようなのたのたした感じはほとんどなくなって、音楽にあわせて両足でステップを踏むような仕草まで見せるようになった。それはいいのだが、やたら外に連れていけとせがむのである。もう夜になっているのに外に出たがって泣いたりする。仕方がないのですっかり暗くなった路地を二人で歩く。夜に外を歩くのは初めてだからか、やたらとテンションが高い。街灯の光やら、看板の猫の絵やら、空き地の草むらやら、植木鉢やら、いちいち指差しては大興奮の大騒ぎである。こいつにとっては毎日がセンスオブワンダーだらけなのだろうなあ、とちょっと羨ましくなったりする。せいぜいこうして後からついて歩いて、それをお裾分けしてもらおうと思う。
 夜、一時間ほど走る。
*穴子丼、キャベツと胡瓜とトマトのサラダ、ラタトイユ、味噌汁、枝豆、マロンケーキ、西瓜。

七月十四日(金)
*トマトと茄子の冷製スパゲティ、ピザ・マルゲリータ、キャベツと胡瓜とトマトのサラダ、味噌汁、枝豆。

七月十五日(土)
*穴子丼、ラタトイユ、トマトと胡瓜と玉葱のサラダ、味噌汁、枝豆。


無断転載禁止 (c) Yusaku Kitano/Hiroko Morikawa(イラスト)
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